「新幹線廃車」に見る企業の危機対応のポイント。

「安全性を考え、
修理より新しく造るのが適切と判断した」

 

JR東日本と、JR西日本は、

台風19号で浸水した北陸新幹線の車両
10編成・120両を、
すべて廃車にすることを発表しました。

 

損害額は、

JR東日本が約118億円、

JR西日本が約30億円。

 

これだけでもかなりの額ですが、
これだけでは済みません。

 

新しく造るわけですから、
そのコストも掛かってくるのです。

 

新幹線1両の製造費は約3億円。
JR東日本だけで、288億円のコストが
かかる見込みになっています。

 

私は、
今回の対応を見て、

「タイレノール事件」

を思い出しました。

 

「タイレノール事件」とは、

1982年・アメリカ・イリノイ州のシカゴで、
ジョンソン・エンド・ジョンソンが販売する
「タイレノール」という頭痛薬のカプセルに毒薬が混入され、
それを服用した人が亡くなってしまったという事件です。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、
この時、どういう措置をとったかというと、

稼ぎ頭の主力商品である「タイレノール」を、
”全米すべての”ドラッグストアから引き上げたのです。

 

この話には続きがあります。

 

このような事件では、
模倣犯が出ることが度々あります。

この事件も例外ではなく、
模倣犯が出たのです。

 

コロラド州のデンバーで、
ブリストル・マイヤーズが販売する「エキセドリン」という頭痛薬に
毒薬が混入されました。

 

ブリストル・マイヤーズが、
この時、どういう措置をとったかというと…、

 

 

”コロラド州内のドラッグストアから”
「エキセドリン」を引き上げたのです。

 

そして直後に会長が記者会見をして、

「投資家のみなさん、ご心配ありません。
この事件がブリストル・マイヤーズの収益に与えるインパクトは
それほど大きくありません」

こう発表したのです。

 

この違い、分かりますか?

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、
イリノイ州で事件が起こりましたが、
”全米すべての”ドラッグストアから引き上げた。

 

一方の、
ブリストル・マイヤーズは、
コロラド州で事件が起こったから、
”コロラド州のドラッグストアのみ”引き上げた。

 

つまり、

ジョンソン・エンド・ジョンソンが見ていたのは、

”お客さま”

 

ブリストル・マイヤーズが見ていたのは、

”投資家”

 

だったのです。

 

この事件のあと、
両社ともカプセルをやめて、タブレットに切り替えました。

 

外から開けると分かるパッケージングにすることで、
毒物混入などを防ぐ措置をして、
再度「タイレノール」と「エキセドリン」の販売を開始しました。

 

どちらの商品も頭痛薬です。

どちらが売れたかというと…、

 

言うまでもありませんね。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、

会社の損害よりも、

”消費者を守ってくれる会社”

という認識が広がったのです。

 

お客さまは、
会社がどの方向を向いているかについて、
敏感なんですね。

 

今回のJR東日本・JR西日本の対応も、

”お客さまの命を守る”

という選択をしました。

 

おそらく、

修理しようと思えば出来たはずですが、
その道を選ばなかったのは
素晴らしいと思います。

 

会社でも、人間でも、
ピンチのときに、本性が表れます。

 

ピンチのときに、

正しい選択ができるように…、

 

日々修行あるのみですね!

 

 

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